院長あいさつ

令和5年4月

群馬県立がんセンター

院長　柳田　康弘

群馬県立がんセンターの前身は、1955年開設の結核の診療を行う東毛療養所です。

しかしその後の疾病構造の変化に対応して、がん診療を中心とした診療形態に改変し、名称も1972年に群馬県立がんセンター東毛病院、1998年に群馬県立がんセンターと改称し、現在に至っています。

同年12月には、地域がん診療連携拠点病院の指定を受け、2014年には緩和ケア病棟を開設しました。群馬県の東南部に位置しており、県の二次医療圏としては細長く、実際には群馬県東部、埼玉県北部、栃木県南部にお住まいの方々に医療を提供しております。

がんの治療は、患者さんとがんの状況に応じて目標を設定し、適切な治療を行う必要があります。そのために、がん専門病院として高度専門医療や先進医療に取り組んで、皆様に医療を提供しています。その取り組みの一部を紹介いたします。

1)    原発巣を確実に取りきる手術が必要な患者さんに消化器外科と泌尿器科では、侵襲の少ないロボット支援手術を提供しています。呼吸器外科や婦人科では内視鏡手術を積極的に取り入れています。

2)    がん治療において薬物療法は大きな役割を果たしています。肺がんや乳がんではコンパニオン診断が浸透し、より確実に治療効果を得られています。また当院は、日本でがんゲノム医療が始まった2019年より国立がん研究センター中央病院と連携し、標準治療が終了した方にがんの遺伝子変化を調べ、その変化に応じた有効な薬剤の情報を提供しています。また、他病院からのご紹介にも積極的に対応しています。

3)    放射線治療も手術、薬物療法に並ぶ重要な治療手段です。強度変調放射線治療、立体照射、小線源治療などによる副作用を最小限に抑えつつ効果の高い放射線治療を、根治療法から緩和治療まで幅広く行っています。画像診断では、MRI、CT、PET/CT、など最新設備を備え、目的に応じた最適な撮影法の選択により、正確な診断根拠を得るよう心がけています。

4)    現状よりもさらに有効な治療（より確実に治る、長生きする、副作用がより少ない）を探求するため、日本、世界の多くに臨床試験（治験を含む）に参加しています。新しい治療を含め、治療の選択肢は多岐にわたりますので、医師からの説明をお聞きになり、ご自身とご家族とで自分にとって最善と思われる治療を選択していただきたいと考えています。

5)    診療ガイドラインは様々な疾病で整備され、現在の医療では大多数の患者さんの治療方針が示されています。しかし、患者さんの状況は一人ひとり異なります。最善ながん医療を提供できるよう、患者さんの話を聞き、多方面から検討できるように多職種チーム医療を実践しています。

6)    がんを発症した患者さんは、がんの治療以外にも多くの悩みを抱えています。がんになってもできるだけ今までの生活を維持したい、治療を続けながらでも働きたいを叶えるため、外来通院センターを拡充しました、腫瘍内科医が中心となって化学療法の安全な運営を行ない、また薬物療法の副作用対策などにも力を注いでいきます。生きがいであり収入源であるお仕事を続けるための就労の支援・相談にも対応します。

7)    平成２６年に開設された緩和ケア病棟では2名の医師が、疼痛管理や身体・精神症状の緩和に取り組んでいます。　

8)    形成外科医のがん医療への役割は多岐にわたり、必要性の増している乳房再建はもとより、頭頸部がん領域での術後機能改善に大切な役割を担っています。

9)    遺伝性腫瘍という生まれながらにしてがんを発症しやすい方がいます。当院は2010年に遺伝カンセリング外来を開設し、遺伝性乳がん卵巣がん症候群に対応した診療を開始しました。2019年からは遺伝診療科を新たに開設し、対象疾患を広げています。

10)  これらのがん医療は、ここでは紹介しきれないコメディカルの活躍で成り立っています。チーム医療の賜物とお受け止めいただければ幸いです。

私たち医療者が大切にしていることは、患者さんの命と生き方です。患者さんとご家族が同じ気持ちでがんに立ち向かえるように支援していきます。

患者さんの意志を尊重し、納得できる医療を提供すること、医療倫理に根ざした医療を行うことは、先進医療を目指すがん医療においても大切なことを考えています。安全安心な医療を届けられるよう、職員一同これからも努力してまいります。